土葺き瓦屋根が何故40年ズレたり漏れたりしなかったのか?

土葺き瓦屋根が何故40年ズレたり漏れたりしなかったのか?(この屋根は阪神淡路大震災を経験しています。)

こちらの屋根は先日の土曜日に診せて頂きました釉薬日本瓦で御座います。漆喰の剥離と隅鬼瓦の倒壊が気になられてお問い合せを頂きました。ありがとうございます。(現場は吹田市)

(隅鬼瓦の倒壊)

理由は棟瓦の内部の葺き土に雨水が常に滞在することにより、鬼を釣る銅線と隅木に打つ5寸鉄釘の電蝕による腐食が原因です。
隅鬼瓦は棟内部・外部の水流を堰き止めてしまいますのでシール材を使用しない40年前の工法では偶に倒壊する場合が御座います。現在はステンレス線やビス、水の浸透率の極めて低い南蛮漆喰、またシール材を駆使して施工しますのでこの様な現象は先ず起こりません

(漆喰の剥離)

こちらの漆喰の剥離も熨斗瓦の勾配が緩くなり(若しくは最初から緩い)棟内部、また熨斗瓦垂れからの巻き込みもあって剥離してしまっております。ただ、棟構造を変える事無くこの箇所に漆喰を詰めますと面土を侵食してまで排水していた現状から悪化する危険性、雨漏りする危険性が跳ね上がります。

(0.4mm亜鉛鉄板の谷樋)

亜鉛メッキ鋼板は亜鉛の腐食で内部の鉄の腐食を守るという特徴があります。厚みも0.4mmあり、40年経過した現在でも穴は開いておりません。これはこの部位に落ちる水量が少ない事が要因で御座います。もっと長尺流れ行きの屋根ですと摩耗と腐食の進行が早まるという結果が御座います。

 

 

 

次に、本題の何故地瓦平部のズレが無かったのか?
こちらのご説明をさせていただきます。

要因を箇条書き致しますと

①勾配が3寸弱・・・屋根勾配がきつくなりますと漏れにくくなりますし、瓦の重ね目にたまる雨水の早期排出・乾燥が促進され屋根材の耐久性も向上致します。今回の屋根の場合は3寸弱と勾配が緩い為ズレ難いのですが、その反面勾配のきつい屋根の恩恵は受けれません。瓦内部の水返しが機能している事と次でご説明する流れ行きが12通りと短い為瓦屋根全体で見た場合、大きな水量が派生しませんので弊害は生まれておりません。

 

②流れ行き12通り・・・流れ行きとは棟瓦から軒瓦までの距離の事です。ズレ難くなる要因はこの流れ行きが短い為瓦全体の重量、軒瓦に直接かかる重量負担が低い事が要因となります。逆に長尺の流れ行きと急勾配屋根はズレ易くなります。

 

③土質・・・藁を蒸して寝かせた粘り気の強い葺き土と、建売り用のあまり寝かさない回転重視の葺き土と。当時の葺き土の販売は2通りありました。瓦を外す際に40年経過しても密着が高い葺き土は良い方の葺き土です。これはあくまで私の地域から生まれた考察ですので地域差は当然御座います。

⑤土量・・土量も少ないと簡単に瓦がガタツキますので振れやすく、ズレ易くなります。この屋根は写真の通り充分な筋葺きの土量です。施主さんも屋根に上り確認していただければガタつかない当時の職人さん(店)の心意気が伝わります。

④土止め桟木・・土止め桟木と桟木事態の嵩と間隔もズレ難い要素となります。今回のピッチは50CM間隔で五分角です。
五分角ですがピッチが50と狭い為、ルーフィング(ビニトン)と土の剥離部位があっても土その物はズレない施工となっております。ルーフィングは当然小屋裏の熱気や屋根の熱量で膨張敗れしている箇所はあるでしょうが、水返しが御座いますので雨漏りとは何の関係もありません。もし水返しがホコリの堆積で負けても次には充分な土量が控えております。ただ、葺き土まで浸食される屋根構造と立地でしたら40年雨漏りしない結果は先ず残せません。よってルーフィングを触る必要性はありません。

⑥軒瓦の緊結・・・鼻隠しモルタルと軒瓦が密着しているとズレ難くなります。また、銅線釣りより銅釘による緊結の方が若干ズレ難くなります。今回の屋根は銅釘打ちで問題ありません。

全くうまくありませんが、上記の考察を絵でご説明しますとこの様な感じとなります。

今回の屋根の場合、凍ても全く無く、棟瓦の改善と谷樋の改善工事で事足ります。

ウチの屋根はどうなんやろう?
40年程経って葺き替える予算もきついし・・・。
でもそろそろ屋根瓦のメンテナンスをせなあかんしなぁ・・。

と考えらている方のご参考になればと思い。書き連ねました。 🙂