銅板の穴開きと裂傷と摩耗と屋根勾配と風害考察


本日は、銅板の穴開きと裂傷と摩耗の違いなど書いてみたいと思います。
朝雨が降り現場作業の出鼻をくじかれた故です。

上のアニメーションは、銅樋の穴開きのメカニズムのヒントをくれた現場の写真です。
銅樋の穴開きは流れ行き4mを超えた軒樋と鮟鱇に躊躇に見られました。
肘棟を構えた屋根で平側でなく妻側や流れ行き2.5m未満の横樋には穴は開いていませんでした。
谷樋や軒樋の穴開きは世間一般的には酸性雨の所為と認識されておりますが、私はそうは思いません。
原因は、落下水流による摩耗、特に空気の汚れた現在では雨中に混じる不純物質による摩耗が第一の原因と考えます。
銅は緑青という建材自身の錆で耐久性を維持しております。ですので降雨時にこの緑青が落下水流に削られ、また再生を図り緑青を噴きまた削られを繰り返して希薄化した後穴が開くというメカニズムです。
また再生銅なのか純銅なのかも耐久性に影響しているかもしれません。
(純銅の方が緑青を葺く力は当然強く落下水流には削られ易く弱いという事です。)

また銅板自体が分厚い程高耐久なのは言うまでもありません。
腰葺き・晒し葺き一文字垂れ直下の穴開きは銅板と瓦との間に堆積した埃が銅版の熱膨張により研磨剤の働きを成し同じように穴が開きます。(特に軒瓦谷芯に於きましては埃の堆積が途切れる事は物理的にありえませんのでケラバより穴開きはより早く進行致します。)

銅板の軒樋を施工する場合、軒瓦にL字の板金を谷直下に備えれば穴開きは絶対防げます。
鮟鱇・呼び樋は二重底で対応。(とはいえ亜鉛メッキ鋼板を仕込んでいない塩ビ樋の費用対効果は抜群であります。集水器で縁を切っていればの話ですが)

本日診断させて頂いた陸谷からの雨漏り↓


こちらは摩耗ではなく裂傷による雨漏りです。
金属は熱膨張しますので、施工時の僅かな歪みや凹みが経年により金属疲労致します。
ですので、摩耗による雨漏りでしたら交換が必要ですが、流れ行き2m程で摩耗は無く、更には膨張伸縮もひと段落した陸谷でしたのでコーキングと鋼板カバーで充分と判断させて頂いております。
一応軒瓦をめくりオーバーフローの水道が出来ていないか否か確認させていただきました。
全く問題無しでした。(勾配不良の場合はこの限りではありません。)

本日最後の30年前のカラーベストの診断 ↓


和歌山県和歌山市の立地。棟包みは塩害の影響もあり塗膜はめくれておりますが、特筆すべきはこの風害多発地域での瓦本体の飛散が30年無かった事。
ひも解けばこの屋根は4寸5分あり埃の堆積によりとても地下足袋では登れ無い屋根でしたが勾配を取ればまた、風にも強いという事を学ばせてもらいました。

解り易く言いますとスカートを履いた女性に立って頂き垂直に強風を浴びせます。
この時点ではスカートは捲れません。
両脇を男性が支え徐々に女性を倒していきますと(屋根勾配が緩くなると)スカートはめくれあがります。
(また瓦棒屋根の風害の殆どは部分吊り子による施工が躊躇でありまして、通しの吊り子で納まっている瓦棒屋根は風害にも打ち勝つ可能性が跳ね上がります。)