2016年12月05日

瓦屋根がズレなければならなかった理由

瓦屋根がズレなければならなかった理由を歴史的に観て紐解いて行く記事となります。お時間が御座いましたら、是非お付き合い下さい。

 

こちらの瓦屋根の写真は平部の地瓦と言います部位がズレて雨漏りしております。
瓦屋根のズレ

瓦屋根がズレる外的要因

瓦屋根は碁盤の目の様に並んでおりますので、どこか一部が、堆積した雪によるねっぱり、鉄道や高速道路・一般道路が引き起こす振動、また軽度の地震や暴風雨に見舞われた際の僅かなズレが年数を追うごとに蓄積されていきますと、丁度碁盤の目が崩れていくようにズレが進行していく場合が御座います。

建築年数にもよりますが、後付けの鉄道や高速道路・一般道路が引き起こす振動は、竣工当時では意図できない瓦屋根がズレる理由でも御座います。

昔の瓦屋根は、屋根に土を置き並べて行く(これを葺くといいます)工法が主流でありました。土葺き工法と言います。その時代の瓦は焼成段階で出来る捻じれがあり、これを上手く調和させて葺きあげる為、また結露吸収や二次防水の役目として土葺き工法が必要でありました。

1970年前後、私の住む関西の燻瓦や明石市で焼成された瓦の極一部には写真の赤丸の部分に現在では必ず施設してある土に食い込まして屋根瓦のズレを食い止める機能の爪が、何故か?施設してありません。

昔の瓦屋根の裏面

地震大国の日本に於きまして、明治・大正・昭和と一般家屋の屋根にあり、充分な震災歴史を持つ瓦屋根が、土に食い込ます爪、瓦をズレから守る為の爪を何故?近代まであえて作らなかったのでしょうか

明治・大正・昭和と続く土葺き瓦屋根の歴史の意味は・・?

昔の瓦製造業者や職人は一般家屋にも普及しだした明治以降、何も考えていなかった人達だったのでしょうか・・?

いえ、そんな事は絶対ありえません。

その理由の真意は、いくら土葺き瓦屋根が高耐久・高耐候性を有していましても、(充分な予算で作る社寺・仏閣・文化財等を除き)

コンクリートを流用出来ない当時の一般家屋の基礎・耐力壁・小屋組みの耐震技術が瓦屋根の機能に圧倒的に追いついていなかった事が原因で御座います。

その為この時代の火災による延焼はもとより、地震に弱い家屋を守る場合の瓦屋根の役目は、大きな震災時の初動時、縦揺れの場合は束抜け・柱抜けなど小屋組の早期倒壊を防ぐ為には、瓦と土量で織りなす充分な重量が必要であり、

また、横揺れの際には自らを犠牲にして家屋の倒壊を防ぐ為あえて崩れて行かなければならない必要性も同時に有していました。

地震による死者を出さない様に(わざとズレ易くする為)瓦裏面の爪を近代まで施設してこなかった事は、上記の理由によるもので御座います。

※瓦屋根は雨でも風でも火災でも地震でも、常に自らを犠牲にして、屋根の下に住む人々を守ってきました。※

報道では見た事ありませんし、謳われる頻度も殆ど御座いませんが、これが本当の一般家屋を守り続けた土葺き瓦屋根の歴史で御座います。

この様に紡がれて来た瓦屋根の歴史や瓦屋根の機能と工法・人命への配慮を、いとも簡単に落ちる・重いとメディアが毎回報道しております。

非常に残念な思いをする機会が多いのですが、日本建築の歴史には必ずその当時の技巧と考察が存在しておりますので、歴史を点で捉える事をしないで、是非、線で捉えて正しく報道して頂きたいと思います。

歴史にもしはナンセンスですが、

もし、基礎・耐力壁・小屋組の耐震技術がもっと早くに確立されていましたら当時の瓦製造業者や職人は要らぬ忍耐や揶揄を避ける事が出来たと私は思います。

ズレさせない為だけならば、とっくの昔に工法や製法は当時の技術力で充分出来ていたと考えられるからで御座います。

以下は、自論であり、仮定でも御座いません。

少々飛躍した考え方では御座いますが、歴史を振り返りますと、瓦屋根でなければ大火・飛び火による死傷者が圧倒的に増え、地震による初期倒壊の犠牲者も大幅にあがり、この記事を読んで頂いている方も、私もひょっとしたらこの世に存在出来なかった可能性があるかもしれない・・。

 

以上の考察と土葺き瓦屋根の歴史に敬意を払いながら雨漏り修理や屋根修理に日々奮闘させて頂いております。